山陰海岸ジオパーク
世界再認定へユネスコ視察
前回はイエローカード


京丹後市など京都府、兵庫県、鳥取県にまたがる「山陰海岸ジオパーク」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「世界ジオパーク」に再認定するための現地審査が7月に行われた。京丹後市では審査員2人が断層を視察し、地元の関係者が貴重な地質遺産をPRした。
世界ジオパークの認定は4年ごとに更新されるが、2022年の前回審査で山陰海岸は2年間の条件付きの再認定(イエローカード)とされた。兵庫県豊岡市の玄武洞公園近くの民間施設に併設された土産物店で鉱物や化石が販売されていることが理由で、中止が求められた。
今回の審査では、ギリシャとインドネシアの地質学者2人が7月6~10日、京丹後市の郷村断層や鳥取砂丘など3府県を調査した。
地元関係者が地質遺産を説明
小学生の地質学習活動もPR


京丹後市では、1927年の北丹後地震で地表に現れた郷村断層(網野町)を視察。ジオパーク専門員で元高校教諭の小長谷誠さんがマグニチュード7・3の地震をもたらした断層の構造や死者2925人と伝えられる震災の被害、「活断層」という言葉が日本で初めて使用された歴史を解説した。同行した中山泰市長も「日本の地震を考える上で象徴的な断層。子どもも学校でたくさん学んでいる」とアピールした。
丹後半島の海岸部は地質が火山岩で硬く、波の浸食を受けても形状が残りやすいため、奇岩や洞窟が点在する。丹後町間人地区の「立岩」(高さ20メートル、周囲1キロ)はマグマの岩床が地中で冷え固まった後に地上へ隆起し、周囲の柔らかい地層が削られて姿を現したとされる。丹後町袖志地区には階段状の海岸段丘を利用した棚田も広がる。
市教育委員会は小学生が市内のジオパーク遺産について学ぶ「大地の学習」を催していることも説明した。審査員は「ジオパークの活動を高い優先順位で行っており、感銘を受けた」と語った。
兵庫県豊岡市の玄武洞公園では、山陰海岸ジオパーク推進協議会が「地質遺産を大切にしよう」といったユネスコの理念を記した看板の新設について説明した。審査員は公園内をガイドの案内で巡った後、鉱物販売を続ける土産物店やミュージアムを見学して事業者と懇談した。店の経営者は「問題を解決して、モデルケースになるよう取り組んでくださいと言われた。推進協と協議を続け、解決方法を探りたい」と語った。審査結果は9月中旬以降に公表される。



【メモ】
山陰海岸ジオパーク
京丹後市丹後町の経ケ岬から鳥取市の西端までの東西120キロで、3府県6市町にまたがる。地球の活動を知る貴重な地質・地形遺産として、2008年に日本ジオパーク、10年にユネスコ世界ジオパークに認定された。国内の世界ジオパークは、洞爺湖有珠山(北海道)、糸魚川(新潟県)、島原半島(長崎県)、阿蘇(熊本県)、白山手取川(石川県)などがある。
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