2025.06.03|

二刀流で地域に活力
女子サッカー・KYOTO TANGO QUEENS
関西1部で奮闘

帝塚山学院大戦で健闘する「KYOTO TANGO QUEENS」の選手たち(5月4日、大津市・伊香立運動公園)=チーム提供

今季から関西リーグ1部に昇格した京丹後市の女子サッカーチーム「KYOTO TANGO QUEENS」が、4月のリーグ開幕から2勝1敗1分けと健闘する。社会人選手全員が府北部に移住し、就業している。サッカーと仕事との「二刀流」で地域を活性化し、住民との密着度を高めている。

関西女子サッカーの1部リーグは全8チーム総当たり。前後期で各チームと2試合対戦し、栄冠を争う。

「KYOTO TANGO QUEENS」は4月13日の開幕戦で、昨季優勝のディアブロッサ高田FCソフィーゾと対戦、1対1で引き分けた。先制されたが後半にパスをつなぎ、新加入の西山皐月選手(26)がゴールを決めて追いついた。

第2節は昨季2位の大阪市レディースFCに4対2で快勝し、リーグ初勝利を飾った。第3節は帝塚山学院大に1対2で敗れたが、第4節は宝塚エルバイレLFCに2対1で勝ち、白星が先行する。

チームの運営会社代表の吉野有香さん(34)はリーグ前半を「上々の滑り出し。初戦の引き分けは勝ちに等しい。選手が自信を持ってチームに勢いがつき、初勝利につながった」と振り返る。

今季は選手7人が新加入した。20代の若手を中心に団結力があり、試合中に互いに話し合ってボールを回し、局面を打開する。吉野さんは「なでしこリーグや高校、大学時代に優勝経験のある選手もいる。攻守のバランスがいい」と評する。

監督の黒澤怜さん(29)は「選手たちが型にはまらず、個々の状況に応じて考えるサッカーを目指している」と話す。前期は残り3試合。吉野さんは「全勝して上位で後期に入りたい」と意気込む。

 

チームの社会人の選手やスタッフの計約20人全員が、他府県からの移住者だ。スポンサー企業などの協力を得て、チームは住居を提供し、就職先を紹介している。

スポンサー契約は現在、約60社と結んでおり、発足時の2021年から約4倍に増えた。チーム運営会社「ゆかサル」取締役の平林正教さん(43)は「一つの事業所に1~2人が働いている。『うちの職場の子』と思ってもらうことが、応援力や認知度のアップにつながっている」と話す。

地域の防犯活動に参加する選手たち(京丹後市久美浜町・京都丹後鉄道久美浜駅前)

選手たちは地域のイベントなどにも積極的に関わっている。5月21日には、京丹後署の痴漢や盗撮の被害防止を呼びかける活動に参加した。地元の男性と結婚した元選手らもいる。

京丹後市の地域おこし協力隊員になったスタッフもいる。杉本くるみさん(25)は兵庫県加古川市出身で小中学時代にサッカーに励んだ。大学卒業後、大阪市内の企業に就職したが、「人とのつながりを大事にしたい」と移り住んだ。

同市弥栄町の野間地区でコミュニティナースを務め、住民の健康や生きがいづくりに取り組む。杉本さんを迎え入れた前野間連合区長の三本正樹さん(75)は「孫のようで、地域に活気が生まれる。多くの人と触れ合ってほしい」と期待する。

懸命にボールを追う姿や幅広い住民らとの交流を通じ、サポーターの輪が広がるのはもちろん、着実に地域に活気を与えているようだ。

 

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住民の生きがいづくりに向け、コミュニティナースとして活動する杉本さん(左)=京丹後市弥栄町