住民運営、10年で幕
日曜のみ営業、2月は土曜も
そば処 歌仙
京丹後市大宮町五十河の山あいの集落にある「そば処 歌仙」が2月23日に閉店する。地元自治会の五十河区が約10年間、日曜限定で営業し、手作りの十割そばや天ぷらなどを提供、観光客や近隣の住民ら年間1500人超が来店した。スタッフの平均年齢が約70歳と高齢化が進んだことが理由で、常連客から惜しむ声が上がっている。
観光施設・小町公園「小町の舎」に隣接する同店は1994年4月、旧大宮町の町営和風休憩施設として開設。木造平屋建て、かやぶき屋根の古民家風で土間と板間に約40席あり、地元の五十河産ソバを用いたそばを提供する。店名はゆかりのある平安時代の六歌仙の一人、小野小町になぞらえて「歌仙」と命名。同町の観光名所として親しまれた。
大宮町を含む旧6町による2004年の京丹後市発足後、市内の民間事業者がそば店を運営したが、数年で撤退。空き店舗となった時期もあった。市は五十河区に「店舗の利用がなければ、建物を売却するか、取り壊すかしかない」と、運営を打診。同区の総会で「店を続けて地域を盛り上げよう」という意見が過半となり、15年7月に住民約10人が交代で日曜のみの営業を始めた。
当初の数カ月は地元産の米や野菜を使った定食を販売したが、思うように客が集まらなかった。五十河産ソバを中心に使ったそばに絞ったメニューに切り替えた。ふくいくとした香りのそばとこくのあるそばつゆの風味を求め、次第に来店者が増えた。多い日で約60人が訪れ、行列のできる人気店となった。
店舗内には、住民手作りのみそや梅干し、豆腐団子を販売する総菜コーナーもあり、品切れが続いたという。スタッフの一人、田上真吾さん(69)は「地元にとって普段の食べ物が、こんなに喜ばれることを知って励みになった」と振り返る。
賃貸期間の更新は5年間で、2期目は年間1500人超を集めた。次の更新時期が迫る中、同区の総会で昨秋、「もうあと5年はしんどい」との意見が大半となった。代表の田上秀明さん(69)は「リピーター客も多く、閉店の貼り紙を見て『なんでやめるの、もったいない』と多くの激励の声をいただいた。残念だが、地域の活性化の目的は果たせたのでは」と話す。
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