2023.11.24|

丹後沖のズワイガニ漁、ブランド力向上へ
全国初の「モモガニ」規制 研究者と漁師らが連携 

モモガニ(左)と成熟した雄のズワイガニのはさみ。甲羅の大きさはほぼ同じだが、モモガニの方がはさみは小さい=京丹後市丹後町・間人漁港
雄のズワイガニの新たな漁獲規制

今月解禁されたズワイガニ(松葉ガニ)漁で京都府海洋センター(宮津市)と府漁業協同組合丹後、網野支所(いずれも京丹後市)や舞鶴支所に所属する底引き網漁船が、今季から「モモガニ」と呼ばれる完全に成熟しきっていない雄のズワイガニを放流する新たな漁獲規制を設けた。海洋センターによると、モモガニに絞った独自の規制は全国初。ズワイガニをしっかり育て、持続的な漁とブランド力の向上を図る。

モモガニは甲羅の横幅が10センチ前後と成熟した雄のズワイガニと同じだが、はさみが小さいのが特徴で、翌年も脱皮してさらに大きくなる可能性がある。

通常、雄のズワイガニは9、10月ごろに脱皮を始めるが、これまでの海洋センターの研究により、雄のズワイガニには脱皮の時期がずれ込む「遅延」と、1年を通して脱皮をしない「休止」がいることが判明。このため漁期に、成熟した他のカニに紛れて網に掛かるという。

モモガニの漁獲の割合は年ごとに変動するが、多い時で甲羅が9~10センチの雄ガニのうち7割を占めた年もある。一方、モモガニは成熟したカニと比べて見栄えが劣り、実入りも少ないため、市場価格が2割程度にとどまる。

海洋センターの試算によると、9センチ以上のモモガニの規制を行うと、5年後には甲羅の大きさが13センチ以上の大型ブランドガニの漁獲量が30%増加、漁獲金額も10%(1隻につき245万円)増える。今回は初の規制のため、対象は甲羅が9センチのモモガニにした。

また、丹後地域では「コッペガニ」と呼ばれるメスガニも甲羅の大きさが7センチ未満の場合に放流する規制も加えた。

11月10日には京丹後市丹後町の間人漁港の市場で、海洋センターの職員らがモモガニの甲羅とはさみの大きさや色味を調査した。協力した愛新丸の船長、佐々木学さん(48)は「カニの漁獲量が回復しているからこそ、多く取るのではなく、資源を守りながら立派に育ったものを得ていく方がいい」と規制を前向きに捉える。

研究リーダーの海洋センター技師、丸山香野子さん(27)は「ブランドガニを増やす取り組みとして他県にも広がればいい」と話している。

 

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間人漁港の市場でモモガニの調査をする府海洋センターの技師たち