2023.10.12|

「フルーツトレイル」5周年 売り上げ拡大
旬の果物、オリジナルスイーツでいかが

旬のブドウ(手前)を使ったスムージーとパフェ
ナシとブドウのクレープを注文した親子連れ

京都府内最大の果物産地・京丹後市で、7月から10月末ごろまで催されるイベント「京丹後フルーツトレイル」が今年で5周年を迎えた。旬の果物を使ったスイーツを果樹園の直売所や道の駅、カフェで販売する取り組みで、若い世代を中心に関心を呼び、売り上げが伸びている。一方で、果物の産地としての認知度向上やさらなる消費増に向け、参加事業者の拡大が課題になっている。

9月上旬、「いえき農園」(同市久美浜町)の直売所には多くの観光客が詰めかけた。家族で訪れた滋賀県竜王町の会社員尾川弘祐さん(30)はナシのスムージー(500円)を注文し、「今まで京丹後が果物産地とは知らなかった。新鮮でおいしい」と味わった。農園を経営する家城俊昭さん(51)は「近年は若者客が増えた。スムージーやパフェを味わって気に入った果物を買い、他の果樹園直売所に向かう客も多い」と喜ぶ。

京都府によると、市内の果樹栽培面積はナシとモモ、ブドウの3種に限っても、府内の全果樹栽培面積の約12%で最も多い。スイカやメロン、イチゴも栽培され、時季ごとの果実を味わえる。京丹後市網野町から久美浜町の国道178号沿いは約20カ所の直売所が並び、「フルーツ街道」と呼ばれる。

その一方で、実は果物の販売量は全国的に減少傾向にある。

総務省の家計調査によると、生鮮果実の年間1人当たりの購入量は2018年に23・9キロと、20年前より23%減少した。

こうした動向を受け、消費拡大の取り組みとしてスタートしたのが京丹後市の「フルーツトレイル」だ。同市はスムージーの調理器具などを購入する補助制度を18~20年度に設けた。初年の18年度には2軒の果樹農家と道の駅(1カ所)が始め、翌年にカフェ1カ所、20年に果樹農家1軒が加わった。

フルーツトレイルの事業をとりまとめる市内の農産物仲卸ベンチャー「田園紳士」の社長、森下裕之さん(41)は「これまで果物を購入してくれた中心の世代が高齢化し、記念日などに果物を贈る習慣も薄れてきた。将来的に観光客数や売り上げが減少する危機感があった」と話す。

森下さんの話では、事業3年目の20年にはスムージーが計6788杯(18年比2・8倍)売れ、売り上げは342万円8千円(同2・9倍)と開始時期の約3倍増になり、その後も好調だ。特にカップルや親子連れが増えたといい、「果物産地の京丹後を若い世代に広める目的は果たせた」とみる。

しかし、京丹後市内には約60軒の果樹の生産農家があるが、参加数は増えていない。トレイルの期間と収穫繁忙期が重なり、農家にとっては人手が足りなくなる時期的な事情もある。森下さんは「トレイルの趣旨に賛同する果樹農家が1軒でも増え、京丹後産果物の付加価値向上につながれば」と期待する。

かつて京丹後市幹部として取り組みに携わった市観光公社の木村嘉充専務理事(64)は「農家が加工や販売まで関わることで、消費拡大につなげたい。飲食店や宿泊施設も参加し、京丹後産フルーツをより多くの観光客に提供する態勢づくりも重要」と指摘する。

 

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直売所に設けられたコーナーで、梨を使ったスムージーなどのスイーツを味わう来店客

施設情報

  • いえき農園

    京丹後市久美浜町浦明578-1 原則無休(午前8時~午後5時)。
    0772(83)0652

  • うみのみえる丘 白岩恒美農園 

    京丹後市久美浜町平田983(※直売所は久美浜温泉「湯元館」横)。不定休(午前9時~午後6時)。
    0772(83)0911

  • Mikke 白岩栄一農園

     京丹後市久美浜町平田1361。原則日曜日(午前11時~午後5時、売り切れ次第終了)。
    0772(83)1216

  • くみはまSANKAIKAN(道の駅)

     京丹後市久美浜町浦明1709。原則無休(午前8時~午後4時半)。
    0772(83)2000

  • Culoco(クロコカフェ)

     京丹後市久美浜町栄町772 原則水~土曜(午前10時~午後4時)。
    080(1502)4819