2024.01.12|

評判の「太郎塩」絶やさぬ 京都の男性、事業を継承
新商品名は「丹後絹塩」

小林さんらが太郎塩を使って試作した調味料
事業譲渡に伴う契約書を交わした池田さん(左)と小林さん=京丹後市網野町島津

京丹後市網野町の夕日ケ浦海岸一帯の海水で約30年間、天然塩を作り続けてきた同町の塩職人、池田龍彦さん(76)の事業を、京都市内で企業のブランド戦略を手掛ける男性が承継することになった。今後、製塩設備を増強し、池田さんに技術を学んだ移住者が作った塩を買い取り、販売する。

建築関係の仕事をしていた池田さんは廃材をまきとして活用できないかと考え、1995年、離湖(はなれこ)近くに製塩事業所「善助」(網野町島津)を設けた。浜詰漁港(同町浜詰)一帯からくみ上げた2500リットルの海水をトラックで運び、チタン製の平釜で1週間炊き上げ、60キログラムの天然塩を作ってきた。

地元に伝わる浦島太郎伝説にちなみ、「太郎塩」と名付けた塩は、京都府内外の旅館や料亭、飲食店関係者に愛用されてきたが、池田さんがほぼ一人で製造するため、生産量や販路も限られた。池田さんは事業を継続してもらいたいと後継者を探したが、製塩の技術は学びたくても、経営にまで興味を持つ人はいなかった。

今回、京都市伏見区で会社を経営している小林弘幸さん(53)が知人を介して池田さんと知り合い、補助金の活用や移住希望者の受け入れなど経営について提案、サポートする中で、「善助」の事業承継に合意。小林さんは昨年10月に受け皿会社として、「丹後絹塩株式会社」を善助の敷地内に設立し、社長に就いた。

太郎塩の名は「丹後ちりめんの産地で作られる絹のように柔らかで真っ白な塩」の意味を込め、今春に「丹後絹塩(きぬしお)」に変わる。

池田さんと小林さんは昨秋、事業の譲渡契約書を交わした。今後は新会社がクラウドファンディング(CF)を使い、天然塩を炊き上げる釜を2カ所に増設する予定で、池田さんの指導を受けて移住者が作った塩を買い取る。池田さんは「若い世代が塩作りに取り組み、地域に貢献してくれるのがありがたい」と喜んでいる。

 

Copyright ©京都新聞