2024.02.22|

【味な店】あったりなかったり 勢野うどん
弾力性ある麺が自慢
炊き込みご飯定食も人気 

店舗外観。桶で作った小さな丸い電光看板とカエルをあしらった飾りが目印になっている
昭和の雰囲気が残る店内には、客から寄せられた験担ぎのカエルにちなんだ品が飾られている(京丹後市久美浜町・「あったりなかったり 勢野うどん」)

京丹後市久美浜町にある観光施設「豪商稲葉本家」の裏門側から、東へ約100メートル歩く。静かな住宅街の一角にある店舗は、小さな桶で作った丸い電光看板があるほかは民家の一軒にしか見えない。つい通り過ぎてしまうほど、周囲の町並みに溶け込んでいる。扉を引いて店に入ると、開店当時の面影を残す「昭和のレトロ感」があふれる。中でも、古い板張りの壁に懐かしさを覚えた。

うどん店は、1929(昭和4)年、現在の3代目店主、勢野俊明さん(76)の祖父が桶の製造・販売業の傍らに始めた。電光看板は当時の本業に由来する。

「祖父は大阪や播州(兵庫県南西部)のうどん屋を食べ歩きして研究しました。試行錯誤を重ねて作り上げた味が基本となっています」と、約40年前に店を継いだ俊明さんは話す。丁寧に手でこねた生地を製麺機で麺にした後、約3時間熟成させて水分を麺全体にいき渡らせることで、「適度に柔らかく、弾力性のあるうどんに仕上がります」。うどんに合う、自慢のだしは、北海道・日高産の昆布とアジやサバ、カツオの削り節を使い、あっさりとした癖がない味わいだ。

ユニークな店名「あったりなかったり」は、農業や林業など力仕事をする男性が大勢来ては1人5杯も食べ、うどんが品切れになったことを残念がった常連客がつぶやいた言葉とか。いつの間にか定着し、広まったことにちなんだ。

人気メニューは、各種のうどんとセットになる日替わり炊き込みご飯の定食。俊明さんの妻、美智子さん(70)手作りの久美浜産野菜を使ったおかずや漬物、ゆで卵(または煮卵)、塩昆布が付き、「うどんを引き立てる味」でお腹も心も満たされる。

店内には、客から寄せられた時計や置物、うちわのほか、「無事に帰る」との験を担いだカエルの品々が飾られ、地元で愛される様子がうかがえる。

 

Copyright ©京都新聞

炊き込みご飯とおかず、漬物と卵が付く日替わり定食。肉うどんやカレーうどんなどのメニューを選べる
板壁に貼られているお品書き

施設情報

  • 「あったりなかったり 勢野うどん」

    京丹後市久美浜町3014。
    0772(82)0902。
    営業時間は午前10時~午後7時(日替わりセットは午前11時から。ラストオーダーは午後6時40分)。
    定休日は毎週火曜と最終週の月曜。

    https://www.kyotango.gr.jp/shops/605/