2025.07.18|まち
盛夏のスズキ
万能かつ強い帰巣性
参院選重ね、投票を
池波正太郎が描いたスズキのイラスト(新潮文庫刊『剣客商売 庖丁ごよみ』より)
何といっても旨いのは盛夏―。食通の作家池波正太郎が絶賛した魚をご存だろうか。いわゆる出世魚のスズキだ。
刺し身や洗い、塩焼き、洋食にも合う。上品で淡泊な白身は食卓に涼を運ぶ。ファンも多く、「高級魚といってよい」とエッセーに書いている。
スズキは古事記に登場し、古くから日本人の食にかかわる。中でも、平家物語の逸話は面白い。若き平清盛が船で熊野に参拝する際、スズキが船内に飛び込んできた。吉兆と喜んだ清盛は料理させて従者らに配り、これが平家繁栄のきっかけになったとか。ただの出世ではない。
スズキの放流調査が行われた由良川河口付近(宮津市石浦)
放流調査で超音波発信機を付けられたスズキ(京都大フィールド研海洋生物環境学分野研究室の眞名野将大さん提供)
近年、心和むような生態が京都大などの調査で明らかになった。場所は宮津市に注ぐ由良川。舞鶴市や福井県の河川で捕獲した54匹に発信機を付けて放流すると、元の生息地へ戻った個体が多くいた。
淡水と海水を往復する習性は知られるが、特定の河川への回帰、遠くても帰巣性が強いことが分かった。故郷への愛着なのか、その距離は60キロ以上で、サケやウナギ類に次ぐとも。
そんな行動を知り、ふと浮かんだ。地元の丹後は都市部への若者流出が続き、Uターンも少ない。人口減少を踏まえてどう豊かな地域をつくるか。20日は参院選の投票日。スズキのように万能とは言わないが、候補者の訴えの中身を見極め、一票を。
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参院選で有権者と握手を交わす候補者(2025年7月3日、京都市内)




