丹後産、雪国のレモン
脇役から主役に
名作『檸檬』とともに
今は第2のブームらしい。菓子や調味料、ラーメンもある。広く使われるレモンのことだ。爽やかな酸味のアクセントを添える名脇役だろう。
京都ゆかりの小説も後押しするのかもしれない。梶井基次郎の『檸檬(れもん)』である。紡錘(ぼうすい)形の鮮やかな黄色、握った時の冷たさ、重さが主人公の心を癒やす。美の象徴として描かれ、最後は「爆弾」として画本の上に置かれる。一行一行の表現が冴え、「不思議な魔力を持つ作品」と言われる。
レモンはこの名作が発表された大正後期から各地で栽培が始まった。戦後は輸入自由化で低迷するが、アルコール飲料の風味が人気を集め、1980年代に最初のブームを呼ぶ。総収穫量は1万トンを超え、瀨戸内など温暖な産地がけん引する。
宮津市の若手農家は雪国のレモンで、その傾向に挑む。6年前から海の近くで育て始め、今季の収穫は初めて2トン超に。実りの冬になった。
要の防寒対策は試行錯誤を重ねた。積雪で折れることもあったが、枝をつったり、実に袋がけをしたり。栽培する仲間も増え、思い描いた「雪景色×レモン」の情景を生む。
〈冬凪の檸檬色づくほのかなり〉水原秋桜子。
京都府では、南部の山城地域を中心に農家や企業が特産の「京檸檬」のブランド化を進める。丹後でも地元を引き立てる、新たな主役になればいい。
残雪覆う海辺に一筋の陽光が差す。
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