2025.04.16|

日本一短い手紙と商店街
交わす言葉に込める思いやり
「昭和100年」に思う

コンクールの入賞作を展示する日本一短い手紙の館(福井県坂井市丸岡町)
磯田道史さん(2024年8月、京都市左京区)

徳川家康の家臣で「これほど面白い男はいない」と、歴史学者の磯田道史さんはみる。「鬼作左(さくざ)」と呼ばれた本多作左衛門重次だ。

主君にも率直に忠告し、私心を捨てて尽くした。陣中から妻に宛てた<一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥(こ)やせ>は、簡潔にして要を得た手紙で知られる。

本多家ゆかりの福井の文化財団が1993年から、日本一短い手紙のコンクールを催す。短いということは一番大切な思いだけを伝えることだろう。

「(妻へ)す」「(夫へ)き」。耳の不自由な夫婦が若い時、はがきでやりとりした内容の入賞作は胸を打つ。

「日本一短いアーケード」を宣言する御旅市場(京丹後市峰山町)
御旅市場に開店した「ソエルガーデン」を営む山添さん夫妻

京丹後市でも、最も短い場所に温かな風が吹く。「日本一短いアーケード」をうたう峰山町の商店街・御旅市場。全長52メートルの通りに、半世紀ぶりに新店舗を30代の夫妻が開いた。観葉植物を扱い、店名の「ソエルガーデン」には、地域に寄り添う意味もある。

御旅市場は最盛期に18店が並んだが、今は2店のみに。シャッターは下り、人影も少ない。現状は厳しいが、空き店舗をチャレンジショップに改装する計画もあり、にぎわい再生の道を探る。出店を弾みにしたい。

今年は昭和100年にあたる。手紙はメール、商店街はモールに変わりつつある。それでも、交わす一言に込められる思いやりがうれしい。

 

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