理想を追求
まろやかな味を
コーヒー豆焙煎所・山香社
久美浜湾に近い山中にコーヒーの香りが漂う。クリーム色の生豆は、焙煎(ばいせん)機にかけられて茶色に変化し、膨らんでいく。山香社の店主、中村智彦さん(33)は豆の状態を絶えずチェックしながら機械の火力を調整する。1カ月の焙煎量は200キロ。試行錯誤し、理想を追求してきた。
「やっと、自分の味になってきた。柔らかく口に入り、香りが広がる。苦みや酸味が突出せず、まろやかな味を目指している」
京丹後市久美浜町出身の中村さんは、京都市内での大学生活でコーヒーにはまった。地元の市役所に就職してからもコーヒー熱は冷めず、各地のコーヒー店を回るうちに松江市の汽水湖近くのまちで求めていた店に出会う。店主に自分で焙煎した豆をもっていくうちに、「退くに退けなくなった」と苦笑する。
3年前にオープンした焙煎所は、昭和40年代に離村した山内地区の麓にあり、車の往来はほとんどない。それでも店には京阪神から客が訪れ、東京の店舗とも取引する。
木のカウンターのある試飲室では、客の雰囲気や体調を見ながらコーヒーをいれる。水は久美浜町の山水をくみ、入り口には町内で拾った珍しい石を並べる。陶芸家に創作を依頼したカップや洗練されたデザインの椅子をそろえ、店内の雰囲気にもこだわる。
「人柄も含めてコーヒーは総合芸術。世代や性別を超えて緊張がゆるみ、会話の糸口になるのがコーヒーの魅力。お客さんが豆を持ち帰り、その場その場で楽しんでもらえたら、きっと世の中はよくなる」
中村さんは、丹後の山中でこう思い描く。
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