進む魚離れ
漁師ら「魚職」知る大切さ
韋駄天に思う


舟屋で知られる丹後・伊根町の伊根小では、児童が魚の食べ方を競う。20年以上続くコンテストで、対象は給食のアジの塩焼きだ。
審査の基準は「頭から尾までつながっているか」など3項目。骨格標本のように旬の味を食べ尽くした女子が言う。「地元の漁師さんが取ってくれた魚なので頑張った」
季節を感じる魚食だが、近年は魚離れが進む。年間消費量はかつて肉類より多かったが、2011年度に逆転した。回復は容易でない。水産経済に詳しい北海学園大教授の濱田武士さんは、「魚職」を知ることがその一歩になるとみる。魚に携わる仕事で、漁師のほか市場の競り人や仲買人、鮮魚店…。食は職が支えている、と。
仏教の守護神・韋駄天(いだてん)の逸話を思う。釈迦(しゃか)の死後、遺骨を盗んだ鬼を追いかけて奪い返す。俊敏な動きで遠くからでも食材を集め、安全で豊かな食事を修行僧らに提供したーとか。
そんな姿から、駆け回り、走って準備した人々へのねぎらいと感謝の言葉が「ご馳走さま」になった(玄侑宗久著『さすらいの仏教語』)。禅寺では韋駄天像を台所の近くに祭る。
明後日に開幕するパリ五輪でも、各国を代表するアスリートの快走に韋駄天を重ねてみてはいかが。食事の時はどこかで誰かが集めた食材と、料理の作り手にも思いを寄せて。
ごちそうさまでした。
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