2024.03.22|

農産品21品目を商品化
京丹後市食品加工支援センター稼働1年
販路の拡大が鍵

市食品加工支援センター内で缶詰製品が製造される様子(京丹後市網野町)=丹後地域地場産業振興センター提供

丹後地域の農水産物を使った加工食品を、地元業者の委託を受けて生産する「京丹後市食品加工支援センター」(同市網野町)が稼働して1年が過ぎた。新商品が開発される一方、商品の試作に想定以上の時間がかかったため、製造個数が目標を大きく下回り、コストもかさんでいる。農水産業の振興につなぐ機能を果たすため、運営を軌道に乗せる方策が求められる。

同センターは業者の新商品開発や製造販売を支援し、ブランド力のある地場産品づくりにつなげようと、市が旧網野町栄養支援センターを総事業費1億3500万円で改修し、2022年に開設した。鉄骨平屋建て延べ250平方メートルに缶・瓶詰めやレトルト食品加工のラインと、炭酸飲料製造のラインを設けた。

これまで丹後地域内外の業者から依頼された加工食品21品目が商品化された。第1号は昨年4月発売の久美浜湾産カキを使った缶詰「牡蠣(かき)のふっくら煮」で、製造数は約1400個。同施設の指定管理者・丹後地域地場産業振興センター「アミティ丹後」によると、柔らかな口当たりで「売れ筋商品の一つ」という。

最近では同町の鮮魚店・橘商店が「常温で持ち帰ることができる土産を」と開発を依頼したレトルト食品「白バイ貝のエスカルゴバター」を発売。同店代表の吉岡高博さん(39)は「丹後産の食材を使った食品を地元で製造していることが、商品のブランド力向上と消費者の安心感につながる」と施設の意義を語る。新たに22品目を試作中だ。

丹後沖で取れた白バイ貝を素材に、地元の鮮魚店「橘商店」と開発した「白バイ貝のエスカルゴバター」

試作過程迅速化が課題 製造数は目標下回る

しかし、商品化に向けた試作に時間がかかる課題も浮き彫りになった。アミティ丹後は1商品の試作に数週間~1カ月を見込んだが、実際は2~3カ月かかった。同施設の田茂井誠センター長(34)は「生ものの海産物などを長期保存に耐えるよう加工する場合、圧力をかけて高温で殺菌するため赤く変色し、食感が硬くなるなど普通の調理にはない反応が出てしまうようなこともあった」と説明する。

23年度の全商品の製造数は9032個(3月8日現在)で、目標の24万5800個を大幅に下回る。開発費の増加で製造コストもかさみ、運営収支は約200万円の赤字を見込む。

販路拡大や情報発信も鍵

衛生管理も徹底されているセンターの内部

アミティ丹後は一定数の商品ができる25年度以降、注文や製造が回り出すと黒字への転換が可能としており、田茂井センター長は「商品の試作を数多くこなして技術を高め、開発のスピードを早めたい」と話す。

販路拡大と情報発信も、量産や黒字化への鍵だ。商品の多くは丹後や近隣の道の駅などで販売されている。橘商店の吉岡さんは京阪神や東京都など大消費地への売り込みを求めた上で、「より多くの業者が商品開発に関わると生産コストが削減でき、利用が広がる」と期待する。

 

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京丹後市弥栄町味土野地区で生産された小豆(写真左)を使って、センターが開発した「味土野大納言ぜんざい」