2024.11.26|まち
ズワイガニ漁が解禁
室生犀星から芥川龍之介へ
故郷のカニをどう思う?

「たいざガニ」の緑のタグと、QRコード入りの白のプレートが付いた間人ガニ(京丹後市丹後町・間人漁港)
芥川龍之介と室生犀星は大正期、東京の田端に住み、交流した。ともに骨董(こっとう)好きで、甘党だったとか。犀星は故郷・金沢のカニも贈っている。
<秋風や甲羅をあます膳の蟹(かに)>
龍之介はその時のうれしさを句に記した。今の越前ガニや加能ガニだろうか。豪快な姿に感嘆し、贈り主への謝意も広がるよう。
日本海の味覚ズワイガニの漁が今月解禁された。歴史をみると、江戸中期に越前の特産になる。鳥取藩でも大名向けの歳暮に使われる希少な高級食材で、赤い姿は縁起物だった。現在は、水揚げ地ごとの呼び名がブランド化し、港町を支える切り札にもなる。
間人ガニで知られる丹後は今季、試練の冬かもしれない。4月に発覚した産地偽装事件の影響である。一部の業者が「たいざガニ」のタグを他産地のカニに付け、高値で販売した。傷ついた信用への落胆は大きい。
再び、どう取り戻すか。京都府漁協は、QRコード入りのプレートを新たに付けて漁獲情報を公開、流通を「見える化」する。併せて、漁師や仲買人、鮮魚店の目利きをPRし、「産地の顔」も見える化できないか。
どんなブランドも、判断するのは買い手だろう。信頼回復の思いが認められ、より安心して丹後のカニを食べてもらう。土産や祝い事にも。犀星が届けた、お国自慢のように。
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芥川龍之介

室生犀星(「愛の詩集 室生犀星詩集」角川文庫より)