2025.02.18|まち
幸せは人生の後半に
丹後の長寿、秘密解明へ
医大がDNAで調査

健診を通じて京都府立医科大の調査に協力する男性(京丹後市弥栄町)=同大学提供
87歳の現役漫画家・東海林さだおさんのエッセーにある。最近どうも「世の中がヘン」。新聞の活字が日増しに小さくなる。自分が話す内容を周囲の人がすでに知っている。
年とともにいろんな感覚が鈍るが、勾配にだけは敏感になった。少しの上りも「坂だ」と気づく、と。当方を含め、うなずく方もおられよう。
昨今は健康寿命が関心を集める。最新の調査で男性72・57歳、女性は75・45歳と平均寿命との差が縮んだ。人生百年と言うより身近に感じる。食事や運動、人とのつながりまで。心身の健康を説く指南書は幅広い。
こちらも実年齢との差が気になる。細胞の老化を示す「生物学的年齢」だ。長寿で知られる丹後地域の高齢者の遺伝子情報を基に、この年齢を調べる研究を京都府立医科大とバイオ企業が始めた。約100人から採血し、腸内細菌や生活習慣などのデータと合わせて長生きの秘密を探る。
実際より若いお年寄りは、どれだけ多いのだろう。老化具合が分かれば、その人なりの対策も立てやすくなる。
老後は<喜楽して、あだに日をくらすべからず>。江戸時代の儒者貝原益軒は、人生の幸せは後半にあるとみた。老いの日々は平坦でない。小さくても喜びや楽しみを見つけ、時にユーモアも。しなやかな、精神年齢の若さを兼ね備えて。
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遺伝情報を調べる意義などについて説明する京都府立医科大の内藤裕二教授ら(京都市上京区・府立医大)

長寿漫画で知られる東海林さんのエッセー集「大盛り!さだおの丸かじり」(文春文庫刊)