2025.01.29|

星空にかける願い
丹後を宇宙産業の拠点に
新分野へのチャレンジ

丹後企業の技術活用が期待される超小型の月面探査車の実物。背景はイメージ=ダイモン提供
シンポジウムで丹後の機械金属加工業の可能性を語るJAXAの研究員(2024年12月19日、京丹後市大宮町)

冬は一年で最も星空が美しい。1等星が多く、星雲も。青白や黄、オレンジ色にさえわたる。

<寒星や神の算盤(そろばん)ただひそか>。中村草田男は夜空を仰ぎ、神を感じた。調和を保ちながら星々を配する。その崇高さに心打たれ、大きな力に委ねようとしたとか。

これも、未知への関心と憧れだろうか。米国を中心に宇宙開発が進む。有人月探査の計画は、アポロからアルテミスへ。日本も後を追い、宇宙戦略基金で民間の力を呼び込む。ロケットや衛星、探査機。宇宙で活躍できる先端技術を掘り起こし、産業の拡大を目指す。

機運は丹後地域にも広がる。機械金属の企業や協同組合、行政がチームを作り、宇宙ビジネスへの進出を探っている。主に自動車部品の製造で培った技能や経験をどう生かすか。

先月あったシンポジウムでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究員からエールも送られた。新たな世界へのチャレンジは若手人材の確保、技術力の証明にもつながろう。

「仕事には夢がなきゃならない」。池井戸潤さんは小説「下町ロケット」で、エンジンの部品開発に奮闘する町工場を描いた。大きな夢を支えるのは、小さくても熟練した技術だ。そこにプライドと意地をみる。熱くもさわやかである。今年の願いを、凜(りん)とした星空にかけるのもいい。

 

Copyright ©京都新聞

直木賞受賞作でもある池井戸潤さん著「下町ロケット」
地域経済を支える自動車部品製造の工場(2019年、京丹後市大宮町・大宮日進)