2025.12.10|まち
丹後舞台の「最後の一色」
和田竜さん渾身の作品
新聞小説に思う
京都新聞ほか各紙で連載されている新聞小説
たかが3分、されど3分。毎朝、夢中になっている。本紙で連載中の小説「未(いま)だ本能寺にあり」だ。
信長は存命か否か。遺骸はどこに? 本能寺の変の謎を解くため、秀吉の家臣が関係者に会い、不審な点を洗い出す。推理小説のようで、毎回見せ場を作る今村翔吾さんの筆致にうならされる。
戦国時代の一色氏の拠点だった弓木城跡を示す石碑(与謝野町弓木)
城跡の丘には東屋が建ち、静かに往時をしのぶことができる
新聞小説の歴史は古い。誕生につながる「続き物」の記事が東京の新聞で始まって150年とか。挿絵入りの連載は多くの読者を獲得し、その後、各紙が小説欄を設けた。きのう、忌日だった夏目漱石は新聞社の専属作家で知られる。紙面で読む事件や風俗と小説を連動させ、興味を引いた。
丹後でも今、連載小説が話題になっている。北海道新聞などで好評を得た和田竜さんの「最後の一色」。戦国末期の丹後守護・一色五郎をめぐる群像劇で、宮津市議会では掲載紙の購読を求める声もあった。
「読者を飽きさせない、だれない内容に」。脚本家の経験もある和田さんはシナリオを作り、小説に書き直した。新刊を開くと、躍動感ある映画のように物語が進む。
明日が楽しみになる-。新聞小説の妙味だろう。刺激に満ちた日々とはいかないが、暮らしもそうありたい。関心を広げ、気づきを増やして一日一日を丁寧に。来年のカレンダーを見て気持ちを新たにする。
Copyright ©京都新聞
丹後で人気を呼んでいる和田竜さんの新刊「最後の一色」(与謝野町石川の書店)




