2023.05.25|

長寿のまち京丹後 地域資源を生かし健康づくりの旅行を

直木賞作家の平均寿命は男女合わせて73歳とか。2004年に同賞を受賞した奥田英朗さんが書いている。遅筆でアイデアも浮かばず、苦しむ作家業は魔の道、と。

では、職業別平均寿命の1位は? 答えは宗教家(僧侶)らしい。少し古いが、職業と寿命に関する40年前の研究がある。長寿の理由は、粗食や規則正しい生活、読経などによる心の安定という。

長寿といえば、京都府北部の丹後地域だろう。人口に占める100歳以上の割合は全国平均の3倍以上も。高齢者は海藻や野菜の食物繊維を多く取り、血糖値や骨密度、歩行速度が他所より優れる―。京都府立医科大の調査報告を聞いた。

中でも京丹後市は、116歳の男性世界最高齢者が住んでいたことで知られ、健康づくりの旅行「ヘルスツーリズム」に取り組む。食生活指導や海岸線のウオーキング、温泉入浴のプログラムでコロナ下の観光もにらむ。

長命を「人生に磨きをかけられる」と喜び、105歳で亡くなった医師・日野原重明さんの言葉を思う。寿命とは「からっぽのうつわのなかに、せいいっぱい生きた一瞬一瞬をつめこんでいくイメージ」。

初々しい新入生、新入社員たちがまちを彩り、スタートやリセットをする4月。日野原さんが子どもたちに贈った名言を改めて胸に刻むのもいい。

 

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