新たな扉を開けてみませんか
ドラえもんの「どこでもドア」
扉の向こうには何がある?



開けると何が見える?
人気漫画「ドラえもん」のひみつ道具の一つ「どこでもドア」のような扉が、宮津市の丹後由良海水浴場の松林に立つ。
同様のドアは全国でお目見えし、公園や海岸、社寺にも。置いた人は、遊び心やいつもと違う風景を楽しんで、と望む。「新しい世界への一歩になれば」との願いもある。
ドラえもんが学年誌に登場して55年。以前、当時の編集担当者に話を聞いたことがある。作者の藤子・F・不二雄さんは締め切り直前まで描けず、過去に戻りたいと思ったことが着想を生んだとか。飛ぶ、消えるなどの要素をさまざまな道具に注ぎ込み、児童漫画の集大成へ一歩を踏み出した。
元文化庁長官で臨床心理学者の故河合隼雄さんに『心の扉を開く』(岩波書店)と題する著書がある。筆者のとっておきの小説や児童書、絵本を通じ、人の心の深みを分かりやすく紹介していて興味深い。読書によって扉の奥を見つめてみようと導く。
例えば、吉本ばななさんの『ハゴロモ』は怖い、暗いとされがちな心の深層を美しく、優しく表す。「無意識の世界のプラスの面をうまく書く力がある」と河合さんはたたえる。
思えば、本も「どこでもドア」のようなものだろう。ページを開くだけで一瞬に違う世界へ行け、閉じればまた元に戻る。読書に限らない。夏至が過ぎ、今年も後半へ。新たな扉を開けてみませんか。
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