昔、夜兎の角右衛門という大盗賊がいた。金持ちは世の中から金銭を奪って私腹を肥やしている。その金と力のあるやつらから、盗み取るということは単に盗み返すだけのことだから悪いことではない――。
そんな盗人にも三分の理があるという理屈で、お務めならぬ”お盗め”と称して、盗賊を続ける角右衛門。その角右衛門には、先代・夜兎の角五郎から受け継ぎ、自分とその一味に厳しく課す三つの掟があった。
一.盗まれて難儀するものへは、手を出すまじきこと
二.つとめをする時、人を殺傷せぬこと
三.女を手ごめにせぬこと
この夜兎の掟を守ってきた角右衛門は、一度もお縄をかけられたことがない。それ故、先代同様に畳の上で往生できるものと思っていた。
ある日、町で拾った大金を落とし主に返す物乞いの女・おこうの姿に心打たれた角右衛門は、料理屋でおこうに鰻をふるまう。おこうには、片腕がなかった。聞けば、七年前に奉公していた駿河の紙問屋で、押し入った盗賊の手下のひとりに斬り落とされたという。角右衛門はわが耳を疑った。あのお盗めは、まさに角右衛門らの仕業だったが、その際、手下の綱六が夜兎の掟を破り、なんの罪もないおこうの右腕を斬り落としていたのだ。角右衛門は盗人の面よごしになったとして、一味を解散し、火付盗賊改方へ名乗り出ることを決意する。
果たして、夜兎の掟を破った角右衛門の人生の結末は…。
- 公開(放送)年
- 2011年
- 監督名
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井上 昭
日本の映画監督。京都府出身。
近年では『鬼平外伝シリーズ』(『夜兎の角右衛門』・『熊五郎の顔』・『正月四日の客』・『四度目の女房』)や『藤沢周平 新ドラマシリーズ』(『遅いしあわせ』・『冬の日』・『小ぬか雨』)(いずれも時代劇専門チャンネル)の演出を手掛ける。